美女の危険な香り
 互いが納得し合っての結婚で、俺にも彼女にも疚(やま)しいところはない。


 堂々と結婚するつもりでいた。


 派手な挙式や披露宴などは一切せずに、入籍した旨、互いの親族宛にハガキやメールなどで伝える気でいる。


 俺は優紀子の葬儀が無事終われば、一段落すると思っていた。


 そのときを見計らって、上手く新婚生活を始めるのだ。


 まるで何もなかったかのように。


 そしてたとえ祝福を受けずとも、俺自身が再婚するという形で。


 俺は千奈美と手を携(たずさ)え、歩いていけそうな気がしていた。


 二人きりでゆっくりと。


 俺にとっても、また彼女にとっても、互いに充実した人生が歩める。


 これ以上いいことはないのだった。


 自宅マンションを出て、ファミレスまで歩きながら、俺はこれからの千奈美との新婚生活に期待を掛けている。
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