美女の危険な香り
 元々優紀子はお嬢様育ちなので、世間を知らないのはもちろん、未だに良家にいた頃の拘(こだわ)りが抜けない。


 香原財閥は都内はおろか、北は北海道から南は沖縄まで事業拠点を持つ、大財閥だった。


 そこの女四姉妹の末の娘だったので、父親の洋平が溺愛(できあい)したのだ。


 いわゆる箱入り娘というやつだった。


 俺は結婚してからすぐに、優紀子と新婚旅行に行った。


 三泊四日で海外のビーチが鮮やかな南の島まで行き、二人でのんびりと過ごした。


 もうかれこれ十年以上前である。


 その頃の優紀子は今のように髪を染めなくても黒髪でいたし、純潔さそのものを保っていて、普通の男なら積極的に抱きたがる感じの女性だった。


 ただし、セックスの経験がなかったので処女だったのだが……。


 俺が優紀子を抱き、不器用ながらも二人で快楽の彼方へと向かったのは、島に着いた日の翌日の夜だった。


 最初優紀子はセックスの快楽に対し、幾分当惑していたのだが、やがて俺に寄り添い、

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