美女の危険な香り
 今の俺にとって葛藤はない。


 代わりにバラ色の世界が開けていた。


 千奈美は年取っていた優紀子とは違って若いので、俺の跡継ぎを産んでくれる可能性もある。


 陸から海へと船は動き出していた。


 途中にいろいろな障害物があって、目的地に辿り着くことが考えられながら……。


 俺は彼女と結婚する際に、必需品を買おうと思っていた。


 結婚指輪である。


 これを互いの左手薬指に嵌めれば、婚約は成立するのだ。


 いずれは必要なものなので。


 そして付けている限り、必ず二人きりで困難を乗り切られると信じて。 


 怖くはなかった。


 夜空には冬の星座が浮かんでいる。

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