美女の危険な香り
 何せ一度しかない人生だ。


 悔いのないように生きていきたい。


 しっかりと地に足を付けて。


 俺は一般的に世間知らずと見られがちな、大財閥の御曹司でありながら、その辺りのことは十分に考えることが出来た。


 何せいい年をした大人なのだから……。


 それに知恵と理性を兼ね備えた生き物なのだから……。


 確かに背負い込むのは大きいものばかりなのだが……。


 俺はその夜、自宅マンションに帰り着いて、すぐに眠ってしまう。


 いつもなら気分が高揚して、薬局で買ってきていた頓服の睡眠導入剤を飲まないと眠れないのだが……。


 一夜が明け、朝起き出すと、俺はベッドの上でストレッチしながら、デスクワークで硬くなっていた筋肉を解(ほぐ)す。


 そしてキッチンへと入っていき、自分でモーニングコーヒーを淹れ、カップをテーブルに置く。
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