美女の危険な香り
 簡単な食事を作り出した。


 トースト二枚とスクランブルエッグ一皿、それに野菜とハムのサラダを一皿作って、一人で朝食を取り始める。


 今日は今から優紀子の遺体と対面するのだ。


 考えてみれば、俺と優紀子の婚姻生活はあっけないものだった。


 財閥間の力学で生じた結婚に過ぎなかったのだから……。


 巧妙に作られたものにはやはり価値がなかったんだな――、俺は今更そう思っていた。


 気付くのが早ければ、修復も可能だったのかもしれないが……。


 俺は食事を取りながら、キッチンのテレビを付け、早い時間帯のニュース番組を見る。


 優紀子が首を吊って自殺した事件も取り上げられていた。


 俺は淡々と食事を取り続ける。


 一夜よく眠れたお陰で、疲れは吹き飛んでいた。


 今から自宅のすぐ近くにある、目黒の病院へと向かうつもりだ。

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