美女の危険な香り
「……気持ちよかったわ」


 と遠慮気味に、呟くようにして言った。


 二人でベッド上で現地産の、やや味に違和感のあるビールを飲んだことは今でも覚えている。


 そして熱い夜が更けていき、俺たちは三泊で存分に休暇を楽しんだのだった。


 日本に戻ってから、俺と優紀子は夫婦生活を本格的にスタートさせたのだが、そこであることが分かった。


 セックスは毎晩のようにしているし、優紀子も生理血がちゃんと出ているのに、なぜかしら子供を授からないのだった。


 なぜだろうと俺は思いながら、父信太郎に付いていき、仕事し続けていたのだが、彼女がちゃんと産婦人科に行って専門の医師に診せたところ、ある重大な事実が発覚したのだ。


 それは優紀子が不妊症であるということだった。


 確かに性行為の初体験も遅かったし、俺はどうして子供が出来ないのか、不思議でならないのだった。


 俺はそれからなぜかしら、段々(だんだん)と優紀子とセックスをしないようになっていく。

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