美女の危険な香り
 今井商事も業績が順調に伸びていて、俺が考えている以上に大きな儲けが生まれているようだ。


 何せ世界中の商社と取引があるのだから……。


 そして社の中の人間たちもいずれは入れ替えてしまうのだから……。


 俺はタクシーの中でそればかり考え続けていた。


 病院まで自宅から車を使えば二十分ほどのようだ。


 俺は揺られ続けながら、珍しくケータイを取り出し、弄(いじ)り出した。


 ネットに接続していろんな情報を見ながら、普段自分が社長室でこなす仕事を超えて、日本はおろか、世界情勢まで端末一つで分かってしまうのを感じている。
 

「お客さん、着きましたよ」


 ドライバーがそう言い、病院に辿り着いたことを俺に告げた。


 俺が前方のメーターに表示されている金額を支払うと、後部の扉が開く。


 俺はケータイを仕舞うと、車を出、病院へと向かった。


 解剖を担当した医師が看護師数名と一緒に出迎えてくれる。
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