美女の危険な香り
 白衣姿のドクターが口を開いた。


「今井様ですね?」


「ええ。……亡き妻と対面したいのですが」


「分かっております。今から地下の霊安室にご案内いたします」


「ご好意痛み入ります」


 俺がそう返し、ドクターや看護師に引き連れられて、霊安室へと向かう。


 さすがに霊安室と言うぐらいだから、冷たい。


 冷え切っていて、俺は羽織っていたコートの襟を立て、防寒する。


 辺りには死臭が漂っていた。


 一番嗅ぎたくない類のにおいだ。


 俺は優紀子の亡骸(なきがら)がある部屋へと入っていく。


 目の前には遺体があり、ドクターが顔に掛かっていた白い布をはぐると、死に化粧が施された優紀子がいた。

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