美女の危険な香り
 俺は普段コーヒーを飲み慣れていて、滅多にお茶を飲まないのだが、さすがに和食のときはお茶を飲むのが普通だろうと思う。


 オーダーした後、椅子に凭れ込んだ。


 外の景色を見ながら、俺はもうすぐ春が来るのを感じていた。


 外気もある程度温かいので、直(じき)に待ちわびた春がやってくるのだ。


 また春の訪れとともに桜が咲き、俺はそれを見つめながら、オフィスへと通うことになる。


 タクシーからでも通りにある桜並木が見えるのだ。


 俺は出勤にはタクシーを使うし、普段からかなり贅沢な暮らしをしていたので、金銭感覚はあまりない。


 信太郎が俺に対し言ったことで、忘れられない言葉が一言ある。


「お前は今井商事の御曹司なんだ。それ相応のものを身に付けとけ」と。


 これが何を意味するかといえば、例えば同じタバコを吸うにしても、外国産の安物などではなく国産のブランド物を買えとか、ジッポも高級なものを使えなどということだ。


 また外食するにしても、魚や野菜ではなく、肉をたっぷり食べろなどとも言われていた。
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