美女の危険な香り
 確かに俺の持ち物はどれも値を張っていて高いし、月の食事代もバカにならないぐらい多い。
 

 俺は今井家に生れ落ちた瞬間から、そういったことを運命付けられていたのだ。


 これは変えようがない。


 俺が大財閥の子息として、家や会社を盛り立てていくには、それ相当の暮らしをする必要がある。


 だが、肝心の俺は単なる一OLの千奈美と結婚する予定だ。


 彼女は俺のバサラのような生活が理解できるだろうか……?


 そしてそんな俺を愛してくれるだろうか……?


 そればかりが不安だった。


 だが、春からの新生活は案外楽しいものとなりそうだ。


 俺も千奈美も、双方が考えている以上に。


 俺がネットの賃貸マンション専門サイトで、品川に二人で住めるような部屋がないかどうかをチェックし始めたのは、翌日の朝だった。

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