美女の危険な香り
 俺はそれを食べてスタミナを付けてから、午後の執務をこなす。


 確かに俺は最高の贅沢をしている。


 この不況下でも今井商事の金めぐりはよく、資金繰りには全く困らなかったし、俺は金では買えない<大会社の社長>という肩書きを持っている。


 俺はいつも思う。


 人間にとって究極の欲望は金でも女でもない。


 名誉だ。


 俺は今、四十代でそれを手に入れていたので、これ以上のことは望まなかった。


 たとえ人間の欲に限りはないにしても……。


 そして子供こそいないが、千奈美と温かい家庭を作れるかもしれないことも考え合わせて……。


 俺は仕事中でもあの香りを思い出し、無性に嗅ぎたくなることがある。


 千奈美の付けている香水の香りだ。


 混浴したときに風呂場に残り香として漂っていて、俺はそれを嗅ぐたびに、彼女を抱き
< 177 / 192 >

この作品をシェア

pagetop