美女の危険な香り
たくなる。


 俺自身、性欲に関しては紛れもなく現役だったし、下手に他の若い女に手を付けたりはしなかった。


 それだけ俺が千奈美に対し、愛情を持っているということだ。


 新聞にも載った。


 <今井商事社長の浩介氏、一般人と入籍>という派手な見出しで。


 俺は現段階では両手に余るぐらいの幸せを感じ取れていた。


 始まり方は不倫だったにしろ。


 そして元妻も若い男と肉体関係にあったのだから……。


 俺は前倒しの結婚生活に十分満足していた。


「どこか行こうか?」


 その言葉を千奈美の口から聞いたのは、バレンタインデーも終わってしまった二月の下旬だ。


 春になる前なので、東京も幾分暖かい。
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