美女の危険な香り
第32章
     32
「ロマンがある街だな」


「ええ。あたし、こういうところ、凄く好きなの」


 俺と千奈美が乗ったタクシーは空港から桂浜まで直行した。


 二人で高知の街を見る。


 辺り一帯に人がポツリポツリとしかいないが、俺はこのロマン溢れる南国に酔い痴れていた。


 千奈美の左手薬指には、婚前だが俺が都内の宝石店で買ったプレゼントした結婚指輪が嵌まっている。


 かなり高かったのだが、俺はこのリングが彼女の手に嵌まっている限り別れることはないと思っていたので、そう考えれば痛い出費でもなかった。


 タクシーは海沿いを桂浜へと走る。


 桂浜は高知市の南端で、俺も千奈美もどんな場所に維新の志士の銅像が建っているか、気になっていた。


 タクシーは三十分ほど海が見える場所を走り抜け、綺麗な海が眼前に開ける桂浜へと到着した。
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