美女の危険な香り
「着きましたよ、お客さん」


「ああ、ごめんね。気付かなかった」


 男性のタクシードライバーにそう返した俺は掛かっていた料金を支払い、先に千奈美を降ろす。


「こんなに綺麗な場所があるのね」


 タクシーを降りてすぐに彼女が漏らした。


 確かに普段から都内に住み続けている俺にも千奈美にも高知の海は綺麗に映る。


 彼女は以前、沖縄に単身で行ったことがあるらしく、離島でサンゴ礁などを見ているので、海の美しさには尚更敏感だ。


 俺は降りてすぐに、案内人の栗本のケータイに掛けた。


 ピルルルルルという呼び出し音が数度鳴って、


「はい、栗本です」


 といういかにも若そうな男性の声が聞こえてきた。


 ――あ、観光案内を頼んでた今井ですが。
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