美女の危険な香り
「ああ。……今、どちらですか?」


 ――ちょうど桂浜にいるんですが。


「あ、私も桂浜にいますよ。龍馬の銅像前にいます」


 ――今から妻と一緒に行きますので。


「お待ちしてます」


 栗本がそう言って電話を切った。


「今の人が栗本さん?」


 千奈美がそう訊いてきたので、俺が、


「ああ」


 と答える。


「龍馬の銅像前って聞こえてたけど」


「うん。……声質からして若い感じだったな」


 俺がそう言って彼女と手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。
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