美女の危険な香り
最終章
     FIN
 俺と千奈美が栗本にガイドしてもらいながら、桂浜を歩いていると、それまで物陰に潜んでいた誠が不意に飛び込んできた。


「おい!」


「何だ、君は?」


 俺は誠だと分かっていながらもあえて問うてみる。


「殺してやるからな」


 誠がそう言って歯をむき出しにし、持っていたナイフを取り出して、翳(かざ)した。


 白刃(はくじん)がギラギラとした光沢を解き放っている。


 目はまさしく獲物(えもの)を前にしたハンターのそれで、一際不気味だった。


 俺は一歩、また一歩と海岸の方へ追い込まれる。


 俺の方ににじり寄って、誠は一気に近付き、人間の急所である心臓に思いっきりナイフを突き立てた。


「うっ……お、お前――」

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