美女の危険な香り
 果たして偶然なのか?
 

 人生最後の場所が実は桂浜で、愛する千奈美を婚前で連れてきて、そしてここで人生を終えることになることが。


 あまりにも俺と龍馬の人生がオーバーラップしていて、まるで人間ドラマのようだった。


 視界が徐々に狭くなってくる。


 俺が死を迎えつつある証拠だ。


 千奈美の姿も霞(かす)み始める。


 俺は刺された自分の急所から、血が溢れ返っているのが分かっていた。


 血液はドロドロと、まるでトマトジュースをぶちまけたようになっている。


 やがて俺の視界が完全に消えてしまった。


 スゥーと魂が抜けていくような感じがする。


 これが人間の死のサインなのかなと思って。


 俺の目に最後に映ったのは千奈美の顔で、嗅覚には彼女の香りが残り続けていた。

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