美女の危険な香り
 俺はそのことが頭にこびり付いて離れない。
 

 そして暇を持て余している優紀子が、猪原(いのはら)誠という、自分よりもかなり年の離れた若い男と密会を繰り返していることを知ったのだ。


 誠は普通のサラリーマンなどじゃなくて、出会い系サイトのデリヘルボーイで、優紀子がネットを使って手引きした男だった。


 俺は子供を産めない古女房に寂しさを紛らわすための若い男性の一人や二人、いてもおかしくないと改めて思うようになったし、自分も千奈美と浮気しているのだから、言いようがない。


 誠の裏には絶対に暴力団がいる。


 出会い系サイトの裏には恐ろしい人間たちがハイエナを狙うかのように屯(たむろ)しているのだ。


 まあ、彼らは世の中の必要悪的存在なので、俺がどうのこうの言ったところで何も始ま
らないのだが……。


 月曜の朝は優紀子の髪から、いつも自宅で使っているシャンプーとは違う匂いがしている。


 多分、俺に代わる新しい男の誠と付き合っているようで。

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