美女の危険な香り
 六本木にある商社の社長レベルだったら、昼飯に分厚いステーキを食べることなど、珍しくも何ともないのだ。


 何せ稼ぎがいいのだから。


 脂のたっぷりと乗った肉はスタミナを付けるのに一番いい。


 俺は差し出されたセットものでは、まず始めに肉に手を付ける。


 ナイフとフォークでザクザクと切って、ジュワーと肉汁が溢れ返った肉を口へと運ぶ。


 一応俺にとっては部下で、常務と専務がいて、社長室の一階下に常務室と専務室がそれぞれある。


 常務の古雅(こが)は基本的に能無しで、ろくに何もしないバカだったので、全部自分の直属の部下である人間たちに仕事を丸投げしていた。


 専務の高橋も古雅と同様、頭が悪い。


 頭が悪いと言うより、実践的なことが何も思い浮かばないんだろうなと思う。


 俺はその古雅と高橋が精鋭とでも言うべき部下たちに作らせた書類を持ってくるので、それに目を通していた。


 最終決定権は俺にある。
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