美女の危険な香り
 考えてみれば、財閥間の結婚というのはいろんな問題が生じるのだ。


 俺が思っている以上に根は深い。


 香原財閥にもし健介が入って、跡を取れば、財閥全体のイメージアップに繋がるものと思われた。


 健介は好青年なのだ。


 若干二十七歳で、洋平にとっては育て甲斐があるだろう。


 東都大法学部を卒業して、大磯AG銀行に入行した後、独学で国家公務員試験の勉強をし、翌年合格したサラブレッドだ。


 つまり洋平としては香原財閥に健介を迎え入れることで、普通だったら旧態依然(きゅうたいいぜん)だと思われがちな財閥に新風を吹き込むつもりでいた。


 幸い、健介は公務員の資格に加えて、英語とドイツ語、フランス語、スペイン語と母語以外に四ヶ国語を喋れたのだし、政財界にも多数の友人がいる。


 与党の民生党の議員とも仲がよく、仕事が終わった後、待ち合わせして飲みに行くことがたびたびあった。


 この毛並みのいい青年なら、きっとうちの家を盛り立ててくれるはずだ――、洋平が直感的にそう思っているのも不思議じゃない。
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