美女の危険な香り

　そして俺は今、会社からタクシーで十五分ほどの場所にあるホテルのスイートルームで千奈美を抱いていた。


　彼女は普通に都内のマンションで独り暮らしをしている二十代後半の独身女性だ。


　俺と知り合ったのはネットの出会い系サイトを通じてで、千奈美は俺と絶妙なまでに息が合っている。


　千奈美は本人から聞くところによると、あまり体験がないらしいのだが、俺に抱かれる
とたちどころに興奮するらしい。


　俺たちは会うたびに情交を交わして、その後一緒に入浴していた。


　俺には家庭がある。


　今は亡きオヤジの信太郎が俺を、赤坂に豪邸を持つ香原(かはら)財閥の一人娘の香原優紀子と結婚させたのだ。


　財閥同士での結婚だったので、昔で言えば政略結婚である。


　優紀子は何も言わない。


　俺がどんなに派手に飲み歩いたり、愛人の千奈美を抱いたりして家に帰らなくても、ひたすら貞淑(ていしゅく)な妻を通していた。