美女の危険な香り
 途中で――というか一階下からだが――、古雅と高橋が乗ってきた。


 俺はいつも堂々としているので、古雅たちが乗ってきても別に意識しない。


 都内の一流半ぐらいの有名私大の経済学部に在籍していた俺は、部下たちが作ってくる資料の様式や内容などがある程度分かっている。


 大抵はボツになるような企画書でも、作ってくる部下たちは一際アグレッシブだ。


 それに比べれば、先代の信太郎の時代からいた古雅も高橋もまるで体たらくで使い物にならない。


 大体暇を持て余しているんだったら、なぜ経済紙やその手の本などを読まずに週刊誌を読むのか、気が知れない。
 

 返って楽してもいいと思われる社長の俺の方が仕事をしているようで、俺は不快感を味わっていた。


 ただ、俺は仕事が終わって、六本木の街に飲みに行くときは寛げている。


 仕事が終わって一杯やれば、後は寝に帰るだけの自宅に戻ればいいわけだし……。 


 俺はその日の仕事が終わってから、千奈美と六本木の街で待ち合わせし、飲むつもりでいた。

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