美女の危険な香り
 左手に嵌めていたデジタル式の腕時計は<PM7:24>と表示されている。


“もうすぐ行かないとな”


 俺はそう思い、手持ちのカバンに業務に必要な書類等と読みかけの文庫本を入れて、チャックを閉め、歩き出す。


 六本木の街は若者が多いし、もうすぐクリスマスが来るので、随所(ずいしょ)にイルミネーションツリーが飾ってあった。


 俺は社のあるビルを出て、待ち合わせ場所へと向かう。


 ちょうど約束の午後八時に俺はサンツールに着いた。


 店内には千奈美がいて、軽く手を振っている。


「おう。約束通りだな」


「ええ」


「軽くコーヒー飲んでから飯食おう」


「そうね。あたしもこれ食べてたから」
 

 千奈美がそう言い、手元に置いてあったケーキを指差す。
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