美女の危険な香り
第13章
     13
 六本木にある和食の店<海老原>は六本木駅から歩いてすぐの、裏通りにあった。


 俺は千奈美と並んで歩きながら、互いに体から付けている制汗剤や香水の香りがしているのを感じ取る。


 この時間帯はもうすでにあちこちが混雑し始めている頃だった。


 俺たちはゆっくりと歩いていき、店内へと入る。


 俺は和洋中どれがいいかと聞かれれば、迷わず洋と言う。


 普段からハンバーガーやフライドチキンばかり食べている千奈美も、せめて夕食ぐらいは和食がいいのだろう。


 俺たちが店に入っていくと、


「いらっしゃい!」


 という声が聞こえてきた。


 海老原の大将で、四十代前半と仕事に脂が乗り切った店長の尾幡(おばた)の声だ。


「あ、今井さん。お久しぶり」
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