美女の危険な香り
 飲み友達でもあるのだし、同時にお互い情報交換し合うことで、支えたり支えになったりしてくれた。


 だから、六本木に多数ある日本料理店でも、俺は迷わず海老原を選ぶのだ。


 千奈美が新着メールを見るため、ケータイのフリップを開いた。


 多分、同僚社員や友達からだろうと思われる。


 今井商事よりも規模が小さい会社に毎日通い詰め、仕事をしている千奈美は、比較的友達が多い。


 メル友からのメールばかりじゃないようで、チェックし終わってから、返信を打っていた。


 大抵若い女性のメールはほんの一言だけなどだ。


 彼女もそういった感じでメールを利用していた。


 俺が会社の執務室で大量に字の詰まった書類ばかりを読んでいるのに対し、腰掛けに程近い千奈美は適当に仕事をしながら、気を抜いているようだ。


 だが夜になると、彼女はガラリと変わる。


 一匹の女豹(めひょう)と化すのだ。
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