恋人[短編]
宮嶋の動きが止まる。
いつもなら、何か言い返してくるはずなのに。
「宮嶋?」
「え、ああ、ごめん。そうなんだ。ノートありがとな」
そう言って、彼は私に背を向けた。
それっきり、今日の会話は途絶えた。
一度、ノートの件でだけ話したけど……。
どうしたんだろう。
私、気に触るようなこと……、嫌われるようなこと言ったっけ。
思い当たらない。
変わったのは、つい言ってしまったあの一言───「頭のいい人が好き」と言ってから。
でも、それで怒る理由がわからなかった。