恋人[短編]
*
約、一カ月。
何もしゃべっていない。最高記録更新だ。……こんな記録更新しなくていいのだけれど。
宮嶋は、私の事を避けている気がする。
なぜって、なんとなく。
ノートを借りに来ることもないし、話しかけてくれない。
今までこんなことなかったのに。
「話しかければいいのにっ」
私の、宮嶋への思いを知っている親友は言う。
確かにその通り。
でもやっぱり怖くて……。
「永遠らしくないぞ」
親友は言う。
そして、無理やり私を宮嶋の前に突き出した。
「ちょっと!!」
「が・ん・ば」
口の動きでそういうと、鼻歌を歌いながら去って行ってしまった。
私は小さく舌打ちをする。
「……永遠?」
久しぶりに、宮嶋が私の名前を呼ぶ。それだけで、天に昇るほどうれしくなってしまう。
我ながら、重症だ。
「あ、えーっと、えと……」
突然だったので、話すことを考えていなかった。
とっさに思いついたのは、いつも(ではないかもしれないけど)話のネタだった、授業のノート。
「ノート! 最近、かりに来ないから……大丈夫、かなって」
「ノート?」
宮嶋は考えるようにして首をかしげ、「大丈夫」と、一言だけ言った。