恋人[短編]
「だって!! あいつ、ペース早ぇんだし」
「同じ授業を私も受けてるんだけど」
「お前は、頭いいから……」
だんだん宮嶋の声が小さくなっていく。
宮嶋は、男のくせにかわいい。
かわいいんだけど、でもやっぱりかっこいい。
背も高くないし、イケメンでもない、勉強はできないし、スポーツは人並み。
部活で、レギュラーでもない。
そんなさえない宮嶋をなんで私が好きになってしまったんだろう。
まあ、理由なんてないんだけど。
ただ私は、宮嶋の笑顔に、魅力を感じて。
優しさが、好きで。
楽しいんだ、一緒にいると。
「しょーがないなあ。昼休みまでに返してよ?」
私が言うと、
「サンキューーー!! まじありがと」
私の大好きなあの笑顔で、そういうんだ。
この瞬間は、何度も言えない気持ちになる。
好きだ、って気持ちがあふれ出そうに。