恋人[短編]


「だって!! あいつ、ペース早ぇんだし」


「同じ授業を私も受けてるんだけど」


「お前は、頭いいから……」


だんだん宮嶋の声が小さくなっていく。


宮嶋は、男のくせにかわいい。

かわいいんだけど、でもやっぱりかっこいい。



背も高くないし、イケメンでもない、勉強はできないし、スポーツは人並み。



部活で、レギュラーでもない。





そんなさえない宮嶋をなんで私が好きになってしまったんだろう。





まあ、理由なんてないんだけど。


ただ私は、宮嶋の笑顔に、魅力を感じて。
優しさが、好きで。
楽しいんだ、一緒にいると。



「しょーがないなあ。昼休みまでに返してよ?」


私が言うと、


「サンキューーー!! まじありがと」


私の大好きなあの笑顔で、そういうんだ。



この瞬間は、何度も言えない気持ちになる。


好きだ、って気持ちがあふれ出そうに。




< 6 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop