恋人[短編]


*

「永遠ー」


愛しい声で、宮嶋が私を呼ぶ。


「何、またノート? さすがにうざいんだけど」

「ノート! お願いだってー。永遠のノート超見やすいんだけど……」

「もう、自分でやればいいじゃん! 絶対かさない」


素直に慣れ、自分。


いいよ、って言って貸出して、その素直な勢いで告白でも何でもしちゃえ!


心の中の、純粋な自分は言う。


無理ムリむり!! 恥ずかしいし、だいたい、いきなり素直になんかなれるかっての!



本来の私は言う。



どっちも自分だから、どっちが正しいのかとかわかんない。



純粋な自分が言う方は確かにその通りだと思うけど、本来の自分が言うのも、その通り。



「お願い、このとーり!」

「いっつもそれ使うんだね」

「じゃあ、土下座……」

「何したって、無駄!」



宮嶋の言葉が止まる。


そして、ため息。


「───っ!! しょーがないな。今回だけだからね! 次からは、だめだからね!」


完全に負けた気がするのはなぜだろう。


「あざーーす!!」

「ちゃんとお礼しなさい」

「ありがとうございます」



宮嶋が笑う。


私は、胸がキュンとなる。



それで終わらせればよかったのに、余計なことを言ってしまうんだ。




「私ー、頭のいい人が好きなんだけど」




< 9 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop