恋人[短編]
*
「永遠ー」
愛しい声で、宮嶋が私を呼ぶ。
「何、またノート? さすがにうざいんだけど」
「ノート! お願いだってー。永遠のノート超見やすいんだけど……」
「もう、自分でやればいいじゃん! 絶対かさない」
素直に慣れ、自分。
いいよ、って言って貸出して、その素直な勢いで告白でも何でもしちゃえ!
心の中の、純粋な自分は言う。
無理ムリむり!! 恥ずかしいし、だいたい、いきなり素直になんかなれるかっての!
本来の私は言う。
どっちも自分だから、どっちが正しいのかとかわかんない。
純粋な自分が言う方は確かにその通りだと思うけど、本来の自分が言うのも、その通り。
「お願い、このとーり!」
「いっつもそれ使うんだね」
「じゃあ、土下座……」
「何したって、無駄!」
宮嶋の言葉が止まる。
そして、ため息。
「───っ!! しょーがないな。今回だけだからね! 次からは、だめだからね!」
完全に負けた気がするのはなぜだろう。
「あざーーす!!」
「ちゃんとお礼しなさい」
「ありがとうございます」
宮嶋が笑う。
私は、胸がキュンとなる。
それで終わらせればよかったのに、余計なことを言ってしまうんだ。
「私ー、頭のいい人が好きなんだけど」