月と薬指
冬月さん、
ほんの一瞬・・・
でも、僕の勘違いかもしれない・・・
でも、
すぐに、
いつもみたいに笑って彼女は答えた。
「そんなもん、おめぇ、
やりたくない事ってのは、しない事だろうがよぅ。
しない事なんか考えた事もねぇから判んねぇなぁ~」
そう言って、彼女は豪快に笑い飛ばした。
眉間に皺を寄せる冬月さん。
バカみたいに冗談を言って笑う冬月さん。
それ以外の顔なんて見た事がなかったから。
まるで何かを深く考えるような、
まるで何かを思い出してしまったような、
あの時、
彼女の時間は、
ほんの一瞬止まっていた。
僕の下腹の奥が疼いた。
僕の深いところが疼いた。