月と薬指
「こら、そんな一気に飲んだら、また吐くぞ。」
胃の内容物は皆無に等しい。
吐き出せるものなんて、何も無い。
胃も、腸も、
何だかわからない臓器も、
まとめて全部、吐き出したんじゃないかってくらい
体の中は軽かった。
「・・~らいじょウぶ、っすヨぉ~」
・・・あ、呂律が回っていない。
アルコールに麻痺した体とは別に、
オレの思考は、
意外とクリアだった。
月明かりの下にいる、
冬月さんの大きな瞳がオレを見つめていた。
長い睫毛の、
1本1本までもが鮮明にみえていた。