月と薬指
目の前に居るってだけで、
体の奥が、
疼いて、
震えて、
何も聞けなかったんだ。
その瞳で見つめられると、
何も考えられなくなって、
いつも彼女のペースに乗せられてしまっていた。
「・・・秋山。」
「・・ふァーい」
「・・・月、綺麗だなぁ。」
仰向けに倒れ込んだオレの、
すぐ傍に腰を下ろして、
月を見上げる冬月さん。
青白い肌の横顔は、
別人のように見えた。
瞳の色までは、
この角度からは窺えない。