月と薬指
見上げれば、
東の空、
亥中の月。
冬の夜風が頬に触れる。
熱を持ったオレの体。
冷えた地面が熱を奪っていく。
稲刈りの終わった田んぼには、
寒そうな、残り株。
淡い月明かりが世界を染める。
今、
この世界には、
二人しか居ないんじゃないかと思うくらいの静寂の中で、
確実に息衝く人の証。
遠くの国道を走るトラックの音。
星々の瞬く声。
街灯に纏わりつく蛾の鱗粉。
山を越えてきた冬の風の匂い。
そして、
額にあてられた冬月さんの体温。
熱を奪われ、
醒めていくオレの意識。
やわらかな温もり。
冷めていく彼女の指先が、
わずかに
震えていた。
寒さのせいじゃないのは、
酔ったオレにでも判った。