月と薬指
後ろから回されたオレの腕に、
自分の手を添えて、
ポンポン、と、
あやしてくれた。
まるで、
小さい子供にするように。
彼女が居れば、
何も要らない。
本気で、
そう思えた。
こういう気持ちを、
なんて言うんだっけ?
あぁ、
そうだ。
「愛してる」
生まれて初めてだった。
愛しすぎて涙がでたのは。
遠くを貨物列車が走っていく。
冬の空気は、闇よりも深い夜に溶けていく。
空には、
ただ、
月があった。