月と薬指
6
憶えているのは、
それだけだった。
あの日の翌日、
強烈な頭痛と、
カーテンから射し込む光に意識が戻った。
見慣れたはずの自分の部屋の天井すら歪んで見えた。
全身が泥のように重く、
体を動かすことが、
ひどく面倒に思えた。
それでも出勤すると、
何人かは同じような状態で。
何も変わることはないと思っていた日常。
でも、
違う。
変わらないことなんて無い。
オレは、冬月さんを探した。
彼女は、
出勤していなかった。