月と薬指
参~過去~
1
しばらくは、仕事を休んだ。
無理も無い。
恋人が死んだのだから。
それでも時間は進み、
あるとき、
ふと、
お腹が鳴った。
「あぁ、生きてるんだ。」
誰もいない暗い部屋。
ため息ほどの消え入りそうな声が薄闇に響いた。
青い空気が震えて、
荒んだ部屋の時間が再び動きだした。
ゆっくりと立ち上がり台所へと向かう。
足の裏に、
フローリングの冷たさが滲む。