月と薬指
生きている。
私は、生きている。
振り返れば、遺影の彼方は笑っていた。
私も、笑った。
そして、泣いた。
明日、店に連絡しよう。
きっと、
みんな心配しているから。
まともには働けないかもしれないけれど、
それでもいい。
だって、
こんなにも生きているんだから。
ずっと、ずっと、
泣いていたから、
目は腫れ上がってひどい顔になってるに違いない。
死んでいた私の時間が動き出した。
彼方と過ごした部屋の時間が動き出した。