月と薬指




「私はな、遊びたいんだよ。

 遊ぶには金がいる。

 だから働く。

 だから報告書も提出する。

 遊ぶってのは、やりたいことだろぅ?

 だから、やりたい事に向かってする事は、全部やりたい事になるんだよ」



確かに、一理あると思った。



でも、

人間は、

そんな理屈を素直に理解できないからこそ苦しむのではないか?



それなのに、


全部判ったような顔をして、

のん気にタバコの煙を吐き出す彼女に、


僕は

少し

腹が立った。



だから、

ほんの少しだけ意地悪な質問をしてみたんだ。



「じゃぁ、冬月さんのやりたくないことって何ですか?」
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