彼氏キケン地帯
強気な彼女は、余裕の笑みを浮かべている。
こんなに直接的な人は初めて。
呼び出ししてきたナントカちゃんたちも、攻撃的だったけどどこか弱さが伝わってきてた。
悔しさとか、悲しさとかが伝わってきてたんだ。
だけど、この子は違う。
あたしを見下し、自分が優位に立っていると思ってる。
その態度が、年上だとか尚のキョウダイ的存在だとか関係なく、すごく腹が立つ。
しかも、尚の前にいるときと態度違くない?!
さっきのモヤモヤした気持ちによって生まれた、小さなストレスが小さく爆発した。
「特別だからって、そんなの自分で勝手に言ってるだけじゃん。その特別が恋愛感情じゃなかったら、アナタがあたしにこんなこと言う権利はないでしょ。」
「っるさいわよ!生意気っ!」
パシンと廊下に響いた。
彼女の手のひらが、あたしの頬に命中したのだ。
「言い返せなくなると、手が出るんだ?」
もとはといえば、彼女があたしに喧嘩を売ってきたのだ。
逆ギレされてビンタ。
せっかくのデートが台無しじゃないか。
「お返し。」
バチン!とさっきより大きな音が廊下に響き渡る。
今度は、あたしの平手打ちが彼女の頬を直撃したのだ。
「っ!なにすんのよ!この暴力女!」
あたしの平手打ちが痛かったのか、涙目になりながら逆ギレしてくる。
「正当防衛ですけど。先に手ぇ出したのアンタでしょ!?」
「最悪!わけわかんない!痛い!」
彼女がそう言いながら泣き出したとき、タイミングよく声がした。
「え…何してんの?」
尚が驚いたように、こちらを見ていた。
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