彼氏キケン地帯


尚はというと、あたしの言葉を聞くなり困惑する。


眉をひそめ、彼女の方を見る尚の目はどうなっているのだろうか。



心の中では、泣きそうになっている自分がいた。

信じてほしい。

でも、彼女の方があたしよりたくさん尚といる時間が多かった。


よく考えればわかったことなのに。


尚の気持ちになって考えれば、そんなことわかってたのに。


なのに…



「違う!あたしは殴ってないもん!あの子が、いきなり…ッ」


「は?どっちが本当なわけ?信じてやりたいけど、わかんねーぞ!?」



そのときのあたしは、どこか冷静で、でも冷えきった心もどこかにあった。


この場にいることが、なんだかどうでもいいようにも思えた。



尚なら、あたしを信じてくれるって思ってたから。


尚のことが好き。

尚にもっと近づきたい。

一緒にいればいるほど、その気持ちは大きくなっていくばかりで、矛盾した自分がいる。


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