彼氏キケン地帯
「あたしっ殴ってなんかないもん!見て?口ん中切れてるんだよ?」
「はぁ?とにかく落ち着けよ。蜜希も、頬見せてみ?」
そっと頬を優しく包み込まれた。
まっすぐとあたしの目を見る尚。
尚の困った顔を見ているのが辛かった。
「信じてくれなくてもいいよ。別に。」
でも、言いたいことはこんなんじゃない。
なのに、あたしの口調はガラスのようで、単調なものだった。
「はぁ?!どういうことだよ、それ。」
「別に。その人のこと信じたいなら、信じればいいじゃん。」
「蜜希?どした?お前変じゃん。」
こんなに冷たいこと言って、冷たい態度なのに、尚の口調は変わらず優しい。
「……あたし、嘘ついてない。本当。信じて…。」
ポロリと零れた涙の粒。
本当は、美沙さんの前でなんか泣きたくなかった。
強気でいたかった。
こんな姿、本当は見せたくなくて、必死で感情を押し殺してた。
尚に信じてもらえなかったらどうしようって不安で、胸が押しつぶされそうだったのを隠してた。
ポンと優しく、尚の手のひらが頭の上にのった。
「…美沙、今日は帰る。頭冷やせよ。」
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