彼氏キケン地帯


歪んだ視界の端に、ギュッと唇を噛み締める美沙さんの顔が見えた。


尚の顔は見えないけれど、きっと困った顔をしているはず。



最近、意地悪なことばかり言ってくるけど、優しいところは変わらない。


ちらりと尚を見上げると、やっぱり少し困ったように笑った。



その瞬間、きゅーっと胸の奥が締め付けられたのがわかった。




「今日は悪かったな。」


帰り際、申し訳なさそうに顔を歪める尚。


いつものように、家の前まで送ってくれた。


朝は待ち合わせだけど、帰りはいつも家まで送ってくれる。


今日も、あたしが家の中に入るまで見届けてくれる。



「またメールすっから。」


「今日…あたしこそ…ごめんね。信じてくれるか不安だったの。嬉しかったよ。ありがとう。」



やっとのことでそう言うと、尚は嬉しそうに笑った。


嗚呼…あたし、この顔が見たかったんだ。


大好きな尚の笑顔が見れて、あたしはなにを思ったのか自然と体が動いた。



「?」


小さく首を傾げる尚をよそに、あたしは背伸びをした。



「!!…なっ?!」



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