彼氏キケン地帯
尚は食事を邪魔されるのが一番嫌いだってことは、この四ヶ月でわかっている。
さっきのことで少し機嫌が悪くなったのか、ベタベタ女を軽くあしらうような態度になった尚。
だけど、それをどうとらえたのか、猫かぶり女の行動はさらにエスカレートした。
「ごめん、ごめん!じゃあ、あたしが食べさせてあげるよ。」
「はあ?!」
「ぶっ!!!」
まさかの発言に、あたしはつい声を出してしまった。
尚は吹き出し、むせている。
そんなあたしたちを気にせず、彼女は尚の手からお箸を奪い、それで尚の大好物のミートボールを掴んだ。
「ハイ、あーん!」
「ちょ、ちょッ?!」
慌てるあたしを余所に、満面の笑みを浮かべる彼女。
いくらなんでも、やりすぎだろー!??
自分の彼女の目の前で、幼なじみだからってそのミートボールを口に入れたりしないよね?
でも、これは尚の大好物。
食べちゃうよなぁ…。
「…………ざけんな。」
「「へ。」」
「こんな食い方できっかよ。」
「な、尚??」
「俺には、俺の食べ方があんだから余計な世話焼くな。」
なんと、お箸でミートボールを掴んでいたことが気に入らなかったらしい。
美沙さんからミートボールを掴むお箸を奪い、一度ミートボールをお弁当箱に入れると、片方のお箸でそれを刺して口の中に入れた。
食べ方にこだわりがあるらしい尚さん。
あたしも「あーん」しなくてよかった。
ちらりと美沙さんを見ると、引きつったような笑みを見せている。
「あ、ごめんね。そうだよね。」
ケケケケケー!!!
ざっまーみろ!!
非常に気分がよかった。
「尚、これいる?」
尚のもう一つの大好物、エビフライで反撃開始を試みた。
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