彼氏キケン地帯
尚のこの美沙さんへの態度はきっと昔から変わらないのだろう。
口は冷たいことを言っているけど、瞳は優しく穏やか。
きっと尚は気づいてない。
彼女の気持ちも、彼女の本性も。
キーンコーンカーンコーン…
「そろそろ戻るか。」
お弁当を食べ終わった尚が、あたしたちが食べ終わったのを確認すると、そう言って立ち上がった。
尚はさっさと屋上の階段を降りていく。
後ろから美沙さんの視線を感じるあたしは、振り返って余裕の笑みを見せ「行きましょ」と言った。
別にアナタなんか相手にしてませんけど?
といった態度をとってはいたけれど、内心非常に焦っていた。
尚のファンならたくさんいるし、密かに想いをよせている人なんてあたし以外に絶対いることはわかってる。
だけど、彼女は違う。
あたしよりも先に尚に出会い、あたしよりも長い時間尚と一緒にいる。
尚の過去を知り、尚との信頼を築いている。
前みたいにはいかないことくらい、なんとなくわかる。
でも、尚は幼なじみの美沙さんよりあたしを庇ってくれた。
「あたし、アンタみたいなお子ちゃまには負けないけど?」
「あたしだって、ケバいオバサンには負けませんけど。」
火花が飛び散るあたしたち。
これは宣戦布告。
絶対負けられない。
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