彼氏キケン地帯
口調だけなら、まるでどこかのやーさんみたいだ。
でも、ここで大人しく「ごめんなさい」言うほど小心者ではない。
「あんたねぇ!これはお互いさまでしょ?!あんたそこ不注意でどこ見てんのよ!」
あちこちの鈍い痛みを受けながら、あたしは立ち上がる。
膝がじーんとして痛い。
もしかして擦りむいた?と思った瞬間、あたしの瞳孔は最大限に見開かれた。
「す、ストッキングがー!!!!」
ストッキングに包まれた脚の膝に小さな穴を発見。
みるみるうちに、それは下へ広がっていく。
発狂すると、あたしは再び地面に体をぶつけた。
「ひどい、ひどいよぉ…これから尚とデートなのに、伝線て……」
四つん這いになり、拳をアスファルトとぶつける。
…もちろん力は抜いて。
そして、目の前の男に視線を向ける。
その瞬間、こいつのせいだと思った。
「どうしてくれんのよ、これ…」
「は?」
「今からストッキング買ってきなさいよぉ!!」
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