彼氏キケン地帯
あたしはそれを見て口をぱくぱくとさせるしかなく、尚はなぜか額に汗をかいていた。
「尚、続き…してよ。」
「はァ?!」
彼女の爆弾発言に、あたしは尚を見た。
尚は「え…えと…」と困惑して、玄関を上がる。
その時、以前デートのときに美沙さんから聞いたことを思い出す。
『性欲の強いアイツが待てるわけない』
そういえば、なんで美沙さんは尚が性欲が強いなんて知ってるんだ。
あの優越感に浸っていた顔。
もしかして、ふたりって…
「よし、美沙こっちこい。早くしてやるから。」
「エ?!」
軽いノリで尚は、ちょいちょいと小さく手招きをしている。
ありえない!と思ってみていると、尚の手にはドライヤー。
嬉しそうに美沙さんは、「やったぁ!」と高い声を出し尚に駆け寄る。
「昔っから、お前って甘えん坊だよなぁ…」
「うるさいよーっだ。」
どうやら、髪を乾かしてもらっている様子。
紛らわしい言い方しちゃって。
その年で、髪乾かしてもらってるってどうよ?
おかしいでしょ。
再び、あの時のように腸が煮えくり返る思いをする。
尚の手が彼女に触れるたび、心の中でどす黒いなにかが動き出す。
きっと、尚は美沙さんをキョウダイのように思っているからこんなことができるのかもしれないけれど、彼女は尚をそんな風には思っていない。
彼女が言っていたとおり、尚にとって美沙さんは特別なのかもしれない。
だけど、尚があたしを想ってくれてるっていうのが伝わってたから…
だから、あたしは何もいえないよ。
『あたし以外の女の子と仲良くしないで』
なんて言えない。
だって彼女は、尚にとって大切な人だから。
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