彼氏キケン地帯
その時、目の前が少しだけ暗くなったのがわかった。
「…なに一人でいんの?」
あたしの上に影ができたからだ。
見上げて見れば、いつものアイツの顔。
おちゃらけた仮面を被り、彼の素顔はわからない。
会いたかったのは、彼じゃないのに。
流した涙をそのままにしたまま彼を見ると、彼のちゃらけた笑顔がはじけた。
「…蜜チャンの涙って、意外とグッとくるよね。」
なんて冗談まで言って。
でも、急に尚の笑顔が見たいと思った。
でも、あの写真を思い出すと胸が苦しくなる。
あのときの尚の顔を思い出すと目尻が熱くなる。
「んく…ッ」
涙をこらえようとすると、上手く呼吸ができなくて苦しかった。
目の前の斉藤なんかに、こんな姿見られたくなかったのに。
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