彼氏キケン地帯
斉藤を思わず凝視していると、やつのポケットからなにかが落ちた。
斉藤より先にそれに気がついたあたし、しゃがんでそれを拾った。
「…?」
どうやら、定期入れ。
「バスできてんだ?」
「そぉだよー。」
なにかがはみ出しているから、少し気になってそれを見ると、そこには長い髪の綺麗な女の人と斉藤のツーショット。
その瞬間、尚と顔は見ていない見知らぬ女の子とのツーショット写真が蘇り、つい苦笑いをしてしまった。
「ん?どーったの?」
「え、あ、ははは。こ、これさ!めっちゃ綺麗な人と撮ってんじゃん!彼女ー?」
「は…?」
定期入れからはみ出していた写真を斉藤に渡してそう言うと、斉藤は急に眉をひそめた。
「あー…ハハ。ね。」
なんだか誤魔化し笑い。
斉藤らしからぬ表情。
不思議に思ってみていると、急にニッと笑ってこちらを向いた。
でも、目が笑ってなくて不自然。
「蜜チャンも撮ろーよ。」
「は…」
何言ってんの、と言い終わる前に、口が斉藤によって塞がれていた。
「んぐ…っ?!」
口の中に、温かい何かが入ってくる。
その瞬間、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなった。
ただ、そんな中わかったことは、尚じゃない甘い香りに包まれて唇を重ね合っているということだけだった。
_