彼氏キケン地帯
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教室に戻ると、一人でさっさと屋上に向かったあたしに香奈が「もー!どこ行ってたんだよ!」と怒っていた。
斉藤とキスしてた…なんて言えるわけなくて、「トイレだよ」と下手な言い訳をした。
そんな嘘に香奈は小さくため息をつくと、しっかりとあたしを見て言った。
「尚くん。…来てたんだよ。」
「えっ…」
“尚”という言葉に、あたしはビクっとする。
罪悪感でいっぱいになる。
そして、急に泣きたくなるんだ。
「尚くんね、蜜希のこと探してたよ?」
「うそ…」
「“ちゃんと話したいから、帰り待ってろ”って…伝言預かったから伝えたかんね。」
本当なら嬉しい。
昼休み前までのあたしなら、今すぐ嬉しくて仕方なかったと思う。
だけど、今は笑えないよ。
だって、あたしには約束がある。
『写真、バラまかれたくなかったら、放課後準備室に来て』
斉藤と、約束がある。
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