彼氏キケン地帯


***


教室に戻ると、一人でさっさと屋上に向かったあたしに香奈が「もー!どこ行ってたんだよ!」と怒っていた。



斉藤とキスしてた…なんて言えるわけなくて、「トイレだよ」と下手な言い訳をした。



そんな嘘に香奈は小さくため息をつくと、しっかりとあたしを見て言った。




「尚くん。…来てたんだよ。」


「えっ…」




“尚”という言葉に、あたしはビクっとする。


罪悪感でいっぱいになる。


そして、急に泣きたくなるんだ。



「尚くんね、蜜希のこと探してたよ?」


「うそ…」


「“ちゃんと話したいから、帰り待ってろ”って…伝言預かったから伝えたかんね。」



本当なら嬉しい。


昼休み前までのあたしなら、今すぐ嬉しくて仕方なかったと思う。


だけど、今は笑えないよ。



だって、あたしには約束がある。



『写真、バラまかれたくなかったら、放課後準備室に来て』



斉藤と、約束がある。


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