彼氏キケン地帯
ギュッと拳を握りしめたところで何かが変わるわけでもないのに、頭の中の尚が悲しそうな顔をしていて、どうしようもないくらいに自分が憎く思えた。
本当なら尚を優先したいのにできない、尚意外の男とキスしてしまった自分が憎い。
なんで、あの時屋上に行ったんだろうって…
なんで、あの時尚の写真を勝手に見ちゃったんだろうって…
まだ終わったわけじゃないのに、もう尚があたしに笑いかけてくれないって思うだけで、胸が張り裂けそうになる。
「あんた…何泣いてんのよ。」
「え…っ」
香奈に言われて、自分が泣いていることに気づく。
「うそ…やだぁ…っ」
溢れた涙を何度も拭うけれど、ぽろぽろと瞳から粒となり零れ落ちる。
今日は泣いてばかりだ。
本当なら…
斉藤とあんな約束しなければ、尚と会って話して謝れるのに。
鼻をすすり俯くあたしに、香奈が頭を撫でてくれた。
「何があったか…話してみてよ。」
優しい声色に、安心したのか涙が一気に溢れ出した。
あたしはコクンと頷くと、香奈にすべて話した。
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